東京・池袋で高齢者ドライバーによる、悲惨な交通事故が起きた。
このニュースは他人事ではいられない。
何故なら私の親も高齢者ドライバーだからだ。

運転するのは父親のみで、母親は免許はもう持っていない。
昔はそれで何の問題も無かった。
これまで父は交通違反する事もなく、唯一警察にお世話になったのは、シートベルトの未着用で一件のみ。
それも随分昔の話だ。

今は車に乗り、シートベルトをせずに運転を始めると警告音がなる。
車を変えてからはそのような「つい忘れていた」という、誰にでも起きる事も無くなった。

若い頃はスポーツカーをかっ飛ばし、高速で他の車に抜かれようものなら、むきになって抜き返す。
今ではこれは重大な事故を引き押しかねない事であり、非常識と言われる事であるが、高度成長期の日本ではまだそんな事も普通に起きていた。

そんな父も齢八十を超えた。
この頃前後から、父の運転には衰えが目に見えて判るようになっていた。
これまでぶつけた事の無かった実家の塀に車をぶつけ、ミラーの一部が破損し、駐車場に止めるにも時間がかかる。
他に車が無かったから良かったものの、やっとの事で駐車したと思った車は斜めに駐車されている。

「これで最後やから」

そう言って、父は車を車検に出した。
年金暮らしで、貯蓄もほぼ無い事もあり、車検の費用を私が出した。

私は実家で暮らしておらず、実家に帰るにもかなりの時間と費用を要する。
それこそ仕事を何日か休まなければいけない。
その為、頻繁に様子を見る事などは出来ず、ましてや自身が父の車を代わりに運転する事など出来ない。

父は幾つも病院に通っており、実家は不便な田舎である為、車は欠かせない。
地方バスも最寄では存在せず、唯一車無しで病院に行く方法は、タクシーに限られる。
そんなタクシーですら、田舎では来るのに時間がかかる。
費用はもちろんの事ながら、何より時間がかかるのである。
待たされる、と言う事を嫌う父は、タクシーが嫌いである。

そのような理由で、今でも父は車に乗り続けている。

「やっぱり車が無いと困る」

そう、父から言われる。
そんな父も今年になり、免許の更新が近づいてきていた。

上述の高齢者ドライバーによる事故の数日前、母から電話があった。

「お父さん、免許更新するって言ってきかない」

実は前回の車検の際に、父はこう言っていたのだ。

「車検はするけど、次の免許更新で終わりやな」

私も、ならばと車検資金を出したのである。
次の免許更新が来たら自主返納、そう思っていた。
しかし、母からそう連絡が来たのである。

父は頑固で、言い始めるとどんなに説得しても耳を貸さない。
おまけに言い過ぎると怒り始める。
その怒りの矛先は母に向けられる。

父はもうよろよろ、いつ車椅子生活になってもおかしくない年齢で、実際それは着実に近づいている。
車の運転も、もう危なすぎる。
私も免許更新は否定したが、言っても父は聞かない。
そうして調べてみた所、父の今の感じでは高齢者講習や、認知症検査で引っかかるだろうと思い、私は母にこう言った。

「じゃあ、受けさせるだけ受けさせたら? それで落ちれば文句も言わんでしょ。多分更新されんでしょ」

母はそれを聞き、じゃあ予約だけしておこうかね、と言った。

そうして数日後、テレビでニュースを見ると池袋での凄惨な交通事故が放送されていた。
高齢者ドライバーによる交通事故。
正にいつ父が犯してもおかしくない、身近な事である。

それから私は、もう一度高齢者の免許更新について調べてみた。
そうすると今度は驚く情報が出てきたのだ。

高齢者講習や、認知症検査では落とされる事はほぼ無いらしい。
あくまでそれは指摘であり、免許更新にあまり影響は無い。
地方の事情や、車が無いと病院等に行くのも困難であり、強制する事は難しいとの情報が出てきたのだ。

私はてっきり、それで落としてくれるのだと思っていた。
いや、今でもそれで問題が少しでもあるようであれば、免許の更新をしないで欲しいと思っている。
問題が無くても、もう更新は出来ません、と公的機関から宣言されて欲しいと願っている。

今から自主返納を説得しても、父がそれに耳を貸さない事は目に浮かぶ。
こんな事故があったのだから、と言っても、それは過去にも言った事がある。

「車が無いと困るやろが」
「タクシー呼んだらすぐ来るんか?」
「儂は安全運転しとるから」
「今までに捕まった事はないんじゃぞ?」
「お前は儂を馬鹿にしとるんか!」

父には家族や友人からの忠告も届かない。
だから公的機関で、正式に運転を止めさせてほしい。
そして、もう少し田舎での交通事情を改善して欲しいと考える。

●追記

私は前の記事でも書いた、就職氷河期世代。
そんな私の貯蓄は少なく、当然今の仕事を辞めると、次は無いと考えている。
だから実家に戻れない。
これは就職氷河期世代(の負け組)でしか判らない心情だと思われる。
その世代の親世代がこの高齢ドライバー世代とも言える。
それでも、実家に帰れるよう今も努力はしているが、現実は甘くない。
結婚も出来ていないし予定も無いし、もはやする気にもなれない。
このブログから判る通り、自分はうつ病を患った者であるのも大きな要因である。
そんな自分が親に免許を返納せよと強くも言えない。
残念だがこれが現実である。
高齢者ドライバーの事では、マニュアルにせよだとか、自動何とか装置をつけろだとかの意見もあるようだが、その資金を誰が捻出するのか。
少なくとも私が出すのであれば、借金をするしかない。
だが返すあてもないが、それでも貸してくれるだろうか?
もしかすると、私自身、そのうち生活保護申請が必要になるかもしれない。
そこから浮かび上がるもう一つの問題、8050問題。
この50歳は、ほぼ運転免許を持っていない事が多い。
私は車も免許もあるが、いかんせん実家が遠い。
実家に戻るにはそこでの仕事が必要だが、未だ見つからない。
尚、そんな父親を介護施設に入れる事も相談したが、病院からの診断が下りないと入れる事が出来ない。
一応、一人でトイレも風呂もまだ行ける事や、受け答えなどは出来る為、要介護にもならない。
そして何より、そんな介護施設に入れる資金が無い。
これら問題も高齢者ドライバーを生み出しているもう一つの要因かもしれない。

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